いくのネット

■エジプト王名の謎





初期王朝から古王国時代

 エジプト文明は、南のスーダンから北へ流れるナイル川を中心に文化が開けて来た。
地中海側の下流域を下(しも)エジプトといい、上流域を上(かみ)エジプトと呼び、さらに、南部のスーダン以南の南部地域がヌビア、または、クシュ地方と呼ばれて来た。
この、ヌビアもクシュも、聖書に由来する。

ヌビア・クシュ地名

大洪水を生き延びたノアには、セム、ハム、ヤペテの三人の子があった。このハムの四人の子の末子が「クシュ」で、クシュの子孫からアフリカ大陸へ移り住んだ民族ヌビア人が生まれた。
さらにクシュは、旧約聖書の古代訳・アレキサンドリヤ・ギリシャ語訳では、エチオピアだと云う。
つまり、クシュのギリシャ語地名がエチオピア、
まとめると、「クシュ=ヌビア=エチオピア」と云う訳だ。

太陽神ラー

   太陽神ラーは、エジプト神話の最高神で、万能の力を持つ神々の王として崇敬された。ラーは、「ハヤブサの頭」を持つ「獣頭(鳥頭)人身」の姿で描かれている。
エジプト神話の特徴は動物崇拝であり、動物は神そのものとされ、ジャッカルの頭を持つアヌビス、タカの頭を持つホルス、雌牛の女神イシスなど、神々は、獣や鳥の頭を持つ姿で描かれている。

星座信仰

一八七九年にピラミッド・テキストが発見されるまで、ピラミッドは、太陽神を祀る太陽神殿だと思われて来た。
ピラミッド・テキストは、サッカラ南方の第八王朝のピラミッドに書かれたものが最後らしく、第八王朝の頃まで、オリオン星座信仰が行われていたらしい。
なぜ、星座信仰が忘れられていったのかー。
それが、エジプト南部からスーダンにかけたヌビア(クシュ)地方に興った「クシュ出身の王朝」に関係するらしい。

クシュ

クシュは、エジプト第一王朝(前三一〇〇年頃~)の時代、ヌビア地方に現われ、紀元前二六〇〇年ごろにナパタを都としたケルマ王国の名前で、ヌビア地方の全てとエジプトの一部を支配した。
紀元前二五〇〇年頃、エジプトが南へ移動し始めたことで、エジプト王朝とヌビア地方が直接的に係りを持つ。
そして、紀元前二一三四年ごろ、上エジプト南部の都市テーベの州侯が自立して、第十一王朝を建てた。
これが、ヌビア出身の王朝の始まりである。

中王国時代(紀元前二〇四〇年頃~前十八世紀頃)

第十一王朝のメンチュヘテプ二世は、その治世二十一年目(紀元前二〇四〇年)ごろに、エジプト全土を統一した。
これが中王国時代の始まりだが、この後に登場したアメンエムハト一世が、第十二王朝初代王とされる。

第十二王朝初代王アメンエムハト

この人物は、第十一王朝最後のメンチュヘテプ四世の治世、王の石棺材料の調達で派遣された遠征隊の司令官が宰相アメンエムハトだったことから、クーデターで王位を簒奪したと言われている。
アメンエムハト一世は、上エジプト第一県(首都・エレファンティネ)の出身だが、その南部がヌビア地方(現在のスーダン領)であることから、ヌビア人ではないかと云われる。
エジプトとスーダンに国境が出来たのは近代であり、それ以前のアフリカに国境は存在しない。

救世主アメンエムハト

混乱の続いた第一中間期の終焉は、人々に「救世主」に救われたという観念を生み出した。
第十二王朝の王たちは、こんな風潮を利用し、文学作品を通じて「統一者・救済者は、アメンエムハト」という
政治宣伝を繰り広げ、「アメンエムハト一世=救世主」と位置づけ、国内基盤を固めた。十二王朝は、その後、二〇〇年余り続いた。

太陽神アメン

第十一王朝が成立したのは、ナイル上流のテーベ地方で、上エジプトで信仰されていたのが「太陽神アメン」で、大気の守護神・豊饒神とされていた。
アメンは、アモン(Ammon)・アムン(Amun)とも表記され「隠されたもの」を意味する。
このアメン神が、上エジプトと接したヌビア地方での信仰神でもあった。

アメン→天

このアメンを漢字化すると、「天(アメ)」…ではないか。
アメン神が、アメン→天(アメ)と漢字表記され、古代の日本列島へ入って来たのではないかー。
日本神話の上古代の神々は、「天(アメ)の△△の命」と表記される。外国語の「ン」には特に意味がなく、日本では「ン」の文字がなかった。カナ文字の「ン」は八世紀以降、空海が創ったと云われている。
アメン神とは「アメ神」、ー「天神」だったのではないかー。
……すると、エジプト王朝と日本の天皇系譜に奇妙な類似が現われる。

天八下王→アメハト王

竹内文献の天皇系譜である。上古第五代に、「天八下王(あめのやくだりおほ)身光天皇」がある。
後ろの「身光」は称号で、光の身体=魂のことで、名前は「天八下」…、奇妙なフリガナが付いているので、読者が惑わされてしまうのだが…。漢字の「天八下王」を自然に読み下すと、「アメハトおう」ではないかー。
ーなら、「…………!」、ではないかー?
第十二王朝の王ー、アメンエムハト一世である。

アメンエムハト王

アメハトとアメンエムハトで、真ん中の「エム」が多い。ーが、最初のアメ(天)を「アメーン」と発音して、これを正確に文字で書くと「アメエン」だが、古代文字に「ン」がなく、替えた表示が「アメエム」だったのではないかー。
さらに、アメハトと読める天皇がもう一人いる。
上古第九代の「天八十万尊」である。
こちらは「アメ・ハト・マ」で、最後に一音多い。
アメンエムハト王には、二世三世がいるので複数いてもおかしくないが…、だが、これは単なる偶然なのだろうかー?